お米

私がこの国に来て一番予想外だったのが米が美味い事である。日本に住んでいたときは小さい頃から両親や身の回りの人々それに新聞やテレビ等のマスコミから日本の米が世界で一番美味いと繰り返し聞かされてきたので何の疑いもなくそれを信じてきた。

それに実際のところ稀に大凶作のときなどに市場に出回る外米はとても食べられたものではなかった。しかしそれもこれも全て政府や農協それとマスコミにまんまと騙されていたんじゃないかとここに来て思い始めた。

一言で言ってベトナムの米は本当に美味い。もちろん正確に言うとベトナムにだってまずい米はいくらでもある。町の安食堂で食べれば間違いなくあのまずい外米である。しかしそれは単に安物の米を使っていると言うだけで高い米を買えば(と言っても一番高くて1kg7,000〜8,000ドン日本円で約60円である)日本の高級米に勝るとも劣ず美味しい。

しかし考えてみればそんな事は当たり前の話しで米を食べる人間は世界中に20億人以上いて、しかもその多くは日本よりも古くから米を作ってきた訳で、そんな人々が何千年来、何の工夫もなくあのまずい外米を食べ続けて来たと考える方がよっぽど不自然である。彼等にだってちゃんと舌もあれば味覚もあるんだから。

ベトナムの米は大半が日本と同じ水稲だが北部山岳地方に行くと少数民族が陸稲も作っている。これらは大都市の市場に出回る事はなく殆どを自分達で食べ、残りは近くの町で売られる程度である。で、この陸稲だが、これがまた美味いのである。

よくは知らないのだが米は温度差の大きいところで取れるものほど(例えば魚沼産こしひかり)美味しいと聞いた事があるのだがこの地域がまさにそれである。1,000mを超える高地のため一日の或いは年間を通しての温度差が大きい。たまにそんな山岳地方に遊びに行くと帰ってから知り合いのベトナム人に「あの辺の米は美味いだろう」と言われたりする。

ベトナムではそんなお米を白米として食べるだけではなく日本と同じように色々な加工食品にもする。酒、みそ、お餅、おかし‥。あと日本では見られない麺類としても食べる。ブン、フォー、バインダー等である。これらの麺類、日本からの観光客にも好評だが私はめったに食べない。讃岐うどんで育った身としてはあの腰のないふにゃふにゃの麺を食べると「責任者出てこい!」と叫びたくなる。