今から5〜6年前に北部の貧しい省で誘拐事件が多発した事がありました。狙われるのは十代の女の子達。各地のバス停などに網を張り「ハノイに良い仕事があるよ」と近づきそのまま中国までさらってしまうと言う手口です。
私の知り合いの中にも身内がさらわれたと言う人間が二人います。一人はタイビン省出身。もう一人はフート省出身。どちらも有名な貧乏省です。二人ともハノイに良い仕事があると声をかけられたそうです。
何故そんな事が分かるのかと言うと、これも二人とも同じように誘拐後3年してから家族に手紙と写真を送ってきたからです。内容は「中国で結婚して子供も産まれました。幸福に暮らしてます」と言うものです。
私は誘拐の話しを始めて聞いたとき、かつて日本にも良くあった、いや今でもあるかもしれないけど、田舎者の娘をかどわかして何処かの温泉宿や地方都市、あるいは都会で売春をさせる。そういうやつだと思っていました。だから写真と手紙の内容にしても家族を安心させる為のもので実際は売春をさせられているに違いないと。
ところが、これが本当に中国人と結婚させる為の誘拐だった。中国の農村では一人っ子政策のおかげで女の子が極端に不足している。だから、そこに目をつけた強引な結婚相談所がベトナムから花嫁をかっさらってきたと言う訳です。
私の彼女の妹もこの誘拐事件の被害者で、今では中国に3人の子供をもうけて暮らしています。その子が去年の夏、5年ぶりにベトナムに里帰りしてきました。中国からの通関時にはパスポートがないので賄賂を払って入関して、その後、ベトナムで正式にパスポートを作り中国に帰っていきました。
その子が中国に戻るとき、しきりに「中国は良いところだ。フートの田舎なんかよりよっぽど豊かだ。だから一緒に行こう」と家族を誘っていました。特に生活に不自由はないが、ベトナム語を話せないのが辛いみたいです。
中国は沿岸部の発展は目覚しいが、農村はまだまだ貧しいと言われていますが、そんな中国の農村でも、ベトナムの貧しい農家から見れば豊かに見える様です。それにしても「ベトナム人の女性と言うのは少々の事があっても、本当にめげないな」と改めて思い知らされました。 |