おしん
ハノイでは住み込みのお手伝いさんの事を「おしん」と言います。この名はもちろんNHK連続テレビ小説「おしん」から取ったものです。あの主人公のような境遇なのでそう呼びます。

ハノイには地方から大勢の人々が出稼ぎにやって来ます。天秤棒の担ぎ売り、各種商店での住み込み、靴磨き、ハガキ売り、風俗、乞食(これも商売のうちで中には田舎に立派な家を持ってたりします)‥。それらの中でも彼女たちは最底辺の仕事の一つです。

豊かな農村の女の子達は「おしんなんかしたらお嫁に行けなくなる」と言ってやりたがりません。そんな理由で多くが北部でも有名な貧乏省の出身です。

中学を卒業したかしないかの15歳位でハノイに出てきます。同じお手伝いさんでも住み込みと通いでは全然違いますし給料もまったく変わってきます。(通いが出来ると言う事はハノイに家があると言う事で、通いのお手伝いさんはそういう人間にとっては割の良い職業の一つです)

彼女たちの日常は朝起きてから夜寝るまでが仕事です。休みはありません。一年に一度テトのときに田舎に帰るだけです。給料は月15万ドン(約1,200円)位。テト休みの前に正月用の服や家族へのお土産を買ったりして残りは田舎の両親に持って帰ります。

そんな日常ですから何年ハノイで働こうと雇い主の家と近所の市場くらいしか知りません。ホアンキエム湖もホーチミン廟も動物園も西湖も文廟も何処にあるのかさえ知りません。

良い雇い主に当たったりすると時には家族で遊びに行くときに一緒に連れて行ってもらえる事もありますが。そんな時に撮ってもらった写真等はとても大事にします。

収入や労働条件で言うなら他の住み込みで働く子達もさして変わりはありません。現にうちの店で働いている子も似たような給料で休みもありません。(だもんで時々自分が「女工哀史」に出てくるような悪徳資本家になったような気になります)

しかし、そういう子達は周りに同じような仲間がいる事が多いので、店の主人の目を盗んではおしゃべりしたりふざけあったりと結構気晴らしが出来ます。

また、靴磨きの子達等は稼ぎの浮き沈みはありますが何と言っても自由があります。仲間とつるもうが仕事をサボろうがすべて自分で決められます。

ホーチミンの有名な言葉に「独立と自由ほどたっといものはない」と言うのがありますが彼女たちにはその両方がありません。

ここまで書きましたが、今回の話しいったいどうまとめたら良いのか分かりません。とにかくこれが今のハノイの一面です。