外国人にとって、最も有名なベトナムの新聞と言えば「ニャンザン(人民)」です。ベトナム共産党の機関紙で、海外の新聞でもよく引用されています。
しかしこの新聞、いざ読もうと思うとなかなか手に入りません。街中に新聞スタンドは数え切れないほどありますが、「ニャンザン」を置いてる店は、まったくと言って良いほどありません。
スタンドの人間に「ニャンザンある」と聞くと「ない」と答える。「なぜ」と聞くと「あんなもん、誰も買わん」と言う。じゃあ何処にあるのかと言うと、党の下部組織や役所、国営企業等が定期購読しています。一般人が読む事は、まずありません。
以前、喫茶店を始めたときに、何か新聞を取ろうと思い、良く分からないから「とりあえず新聞と言えばニャンザンや」と思い、当初は「ニャンザン」を取っていました。で、それをベトナム語の先生に言うと「あほか」とハノイ弁で言われてしまいました。「そんなもん、誰が読むねん」
実際、中身はと言うと、これが本当につまらない。「確かにこれじゃあ、よっぽどの物好きか関係者以外は読まんわな」と言う代物でした。
じゃあ、どんな新聞が読まれているのかと言うと、三面記事専門新聞かスポーツ新聞です。その中でも特に売れているのが「アンニン
テーゾーイ(世界の安寧)」と「テエタオ バンゲ(スポーツと文芸)」
前者は、ベトナムの「東スポ」と言ったところで「ほんまかいな」と言う記事が、必ず毎回載っています。「チェルノブイリ原発付近では、放射能によりねずみが巨大化し、調査に入った科学者が数名襲われた」だとか「日本人の自殺の方法で二番目に多いのが切腹だ」だとか。また、これを読んでるベトナム人が、結構、信じていたりして。
この新聞は、他にも三面記事が売りなのだが、これが、読んでみるとめっぽう面白い。辞書を引く手ももどかしく、最後までぐいぐい一気に読ませてしまう。たいした筆力である。
ベトナムの三面記事は、基本的に解決した事件しか載せない。必ず、犯人が捕まるか死ぬかするので、記事を読んでストレスがたまるような事にはならない。実録物の短編小説と言ったところ。ベトナムには「性と暴力」の大衆小説がないので、これがその代りをしているようです。
今まで読んだ中で一番面白かった記事は、二人組の犯人が、中国国境近くの町ランソンで、人民軍から自動小銃を奪い、ハノイに向かう。それを軍と警官が協力して追い、最後は装甲車や手榴弾まで出てきて、犯人二人が射殺された事件です。
この記事では、目撃者も、生き残りも一人もいないのに、二人組の犯人が、一人の被害者を殺害する場面を、まさに見てきたように、犯人の心理描写まで交えて描いてあり「これは面白い」とうなった。
その他に、ベトナムの新聞では基本的に、経済は常に発展し、政策に間違いはなく、政争もなく、警官は優秀で‥。少なくとも日本の新聞のように、読んでてだんだん気が滅入るなんて事には成らない。それが良いか悪いかは別にして。
|