賄賂

先日、私はハノイに来てから始めて賄賂と言うものを渡した。仕事でこちらに来られている人間にとっては日常茶飯事の事なんだろうが、私の場合、これまで学校に通うのがメインでほとんどお金を使うだけの生活をしていたので賄賂とは無縁だった。

2年前から小さな喫茶店を開いてはいたが、無届けで毎月税金だけを払っていたが、特に問題もおきなかった。多分あまりにも小さい店だし、あまりはやってそうにもないのでお金の匂いを感じられなかったんだろうと思う。

ところが今回、今の店に引っ越してから2週間ばかり過ぎた頃(オープン前)どこから聞きつけたのか市人民委員会の役人が店にやって来て「営業許可証の事で困ってるんじゃないか」と言ってきた。

その時実際、営業届を出す人間が他省の出身と言う事で、これでは申請できないと聞かされ困っていたところだった。(ハノイでは現在、身分証明書の住所がハノイでなければ家も買えないし、電話も引けないし、営業届も出せない事になっている)

だから「届を出そうと思ってる人間が他省出身者なのだが、申請者はハノイの人間でないと駄目だと言われて困っている」と言うと「私ならあなたの手助けが出来る。他省出身者の名前でも営業許可証を取る事が出来るがどうしますか」と言われて「是非お願いします」と答えた。

その後「じゃあ、場所を変えよう」と人民委員会横の喫茶店を指定してきた。その喫茶店と言うのが幅2m位の路地に屋根を付けただけのもので、奥の席に着くと、ついたて代わりの木が生えていて他からは様子をうかがえない実に密談向きの席だった。

席に着くとその男は「自分ならあなたの望むものを手に入れる事が出来る。しかしそれに着いてはあちこちに無理を言わなければならないので云々」と話し始めた。彼の話しは実に持って回って長いのだが延々と聞いていると様は金を出せと言う事らしいのだが決してお金の事は言わない。

いいかげん痺れを切らして「いくら払えば良い」と聞くと「そんな事、俺の口から言えるわけがない」と言うので「相場が分からない。教えて欲しい」と言うと、またいろいろ講釈があってから「一般的にはこんなものかな」と言ったのでその金額を払った。

その時始めて実感したのだが、賄賂の事を袖の下とは良く言ったもので、実際に渡す立場になると堂々と正面から渡しにくくて、ついついアンダースローのようにしてテーブルの右横下を通り相手に渡す事になった。「まさに、袖の下とはよく言ったものだな〜」と実感した。